Bojan International

旅行記・乗車記・フェリー乗船記やアイヌ語地名の紹介など

道東の旅 2011/春 (167) 「『北進』に込められた儚い願い」

国鉄白糠線

その場の思いつきで国道 392 号線を北進することになったのですが、実はこのルート、かつて「国鉄白糠線」が通っていたところなのです。

白糠線(しらぬかせん)は、日本国有鉄道国鉄)が運営していた鉄道路線地方交通線)である。北海道白糠郡白糠町に所在する根室本線白糠駅から分岐し、同町二股地区の北進駅までを結んでいたが、1980年の国鉄再建法施行を受け、特定地方交通線廃止の第1号として、1983年に廃止された。
Wikipedia 日本語版「白糠線」より引用)

はい。「国鉄再建法」の取り組みの下で、真っ先に廃止されてしまった気の毒な路線なのですが、それもその筈でして……。

沿線の石炭及び森林資源の開発を目的に計画された路線で、本来は、改正鉄道敷設法別表第147号の2に規定する予定線として池北線の足寄駅に結ばれ、さらに足寄駅から新得駅までの北十勝線(未成線)とあわせて根室本線のバイパスを形成するはずであった。
Wikipedia 日本語版「白糠線」より引用)

「本来は」「はずであった」という、お決まりの文句が並んでいます。しかし……

1964年に上茶路駅までが開業し、釧路二股駅までの工事も日本鉄道建設公団の手により1970年には完成していたものの、折しも「赤字83線」のローカル線廃止取組みの最中であり、開業すれば赤字必至のローカル線の引き受けを国鉄が拒否したため、釧路二股駅までの開業はこの取組みが頓挫した1972年に当時の運輸大臣であった佐々木秀世の命令という異例の形で行われた。
Wikipedia 日本語版「白糠線」より引用)

日本と言うのは何かと不思議な仕組みがあるところで、当時既に「国鉄」と「鉄建公団」は全く別個のものとして動いていました。鉄建公団はとにかく建設するのが仕事でその後は与り知らぬ……という位置づけで、一方の国鉄は既存の路線の維持だけでも精一杯なのに、どんどん採算の取れない路線を押しつけられて赤字が嵩むばかり……という、何ともおかしなことになっていたのでした。

前代未聞の「引き受け拒否」

中でも白糠線は、沿線の炭鉱もすべて閉山してしまったこともあって巨額の赤字を垂れ流し続けることが明らかで、1972 年に上茶路から釧路二股まで 7.9 km の延伸が決まったときに、国鉄が引き受けを拒否するという前代未聞の出来事まで起こったのだそうです。

結局、Wikipedia にもある通り、時の運輸大臣の「命令」で開業「させられる」羽目になってしまった訳なのですが、その際に、新たに暫定的な終点となる「釧路二股駅」を「北進駅」に、隣の「奥茶路駅」が「下北進駅」と変更されています。もともとは、この先で山を越えて、螺湾(らわん)経由で足寄まで向かう計画なので、さらに北へと進むように「北進」という駅名にした、ということですね。

もちろん、結果は最初に引用した通りで、もともとイヤイヤ引き受けた経緯もあってか、1983 年にあっさりと全線廃止されてしまい、北進から北に延びることは幻と終わったのでした。

ちなみに、二股(白糠町)から螺湾(足寄町)に抜ける道は、現在も存在しません。

というわけで……。この「国鉄白糠線」というのは、「なーんでこんなところに鉄道を作っちゃったかなぁ」とも言うべき存在であるかのようにも思えるので、実際にどんな所なのか見ておこう……! となったわけです。

路傍の牛

そんなことを考えながら車を走らせていると、

国道脇に牛の大群が。ちょいと車を停めてみましょうか。

牛のいたところから、国道を挟んで反対側(東側)に、あぜ道がありました。

どうやら、これが「白糠線」の跡地のようです。やはり、かなりの遺構が残っているようですね。まわれ右をして北のほうを見てみても、

国道の横をまっすぐ北に向かっています。……これだけ立派な国道が並行していたら、バス転換も簡単にできてしまいますからね。

この時白糠線は営業係数3,077(100円稼ぐのに3,077円かかる)という国鉄一の赤字路線であった。白糠線は石炭輸送という当初の目的がなくなっていたこと、全線が白糠町内であり、複数の自治体を走る他線に比べ地元自治体からの了承取り付けは容易であったこと、ほぼ並行して国道392号が通っており、しかも集落は線路沿いよりも国道沿いにあったことなど廃止の条件が整っていたため、特定地方交通線の先陣を切って1983年に廃止された。開業から19年、上茶路 - 北進間が延伸開業してわずか11年後であった。
Wikipedia 日本語版「白糠線」より引用)

まぁ、やむを得ないですよね……。

前の記事続きを読む

www.bojan.net
Copyright © 1995- Bojan International