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アイヌ語地名の傾向と対策 (124) 「茶俊内川・古丹別・チエボツナイ川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院電子国土Webシステムから配信されたものである)

茶俊内川(ちゃしゅんないがわ)

chasi-un-nay?
砦・ある・川
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)

小平町北部を西流する川の名前です。美唄にも「茶志内」という地名がありましたから、これは楽勝ですね! chasi-un-nay で「砦・ある・川」でしょう!

念のため、「角川──」(略──)を見ておきましょうか。

地名はアイヌ語のチャシウンナイに由来し「柵のある沢」(東西蝦夷場所境取調書上),「砦のある川」(アイヌ語地名解)を意味するとする説と,チャララセナイに由来し「滝川」を意味する(北海道蝦夷語地名解)とする説がある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.871 より引用)

うーん、永田翁の「チャララセナイ」が「チャシュンナイ」になった、という説はちと厳しいような気がするのですが……。

「角川──」にも引用されていますが、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」を見てみると……

 古い五万分の地図では、この川にオンネオタネコロという名がついていて、ここから一㌔ほど行ったところにチャシウンナイという名がついている。

少し南側に「小種子」という地名があるので、その語源となった「オタネコロナイ」と対比していたのかも知れませんね。

松浦武四郎は『西蝦夷日誌』の中で「沖に一つの岩有是を以て号るよし」と記して、ここが昔の増毛場所と苫前場所との境であるといっている。
更科源蔵更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.144 より引用)

あれ、新説ですか……?(汗)

沖の岩は場所の境としたかもしれないが、この岩と川の名とは関係がなさそうであり、むしろ函館本線茶志内駅の地名と同じにチャシ・ウン・ナイ(砦のある川)と思われる。
更科源蔵更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.144 より引用)

なぁんだ。今までの前振りは何だったんですか……(笑)。

古丹別(こたんべつ)

kotan-pet
集落・川
(典拠あり、類型あり)

苫前町内陸部の地名で、国鉄羽幌線の駅があったところです。これも由来は明瞭ですね。kotan-pet で「村・川」といったところでしょう。

では、今回も更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」から。

古丹別という意味は、部落のある川ということ。現在、市街の近くにある川は、三毛別川であって、これが合流してコタンペッになって、上平の近くで海にそそぐのである。
更科源蔵更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.146 より引用)

ふむふむ。まったくその通りですね。古丹別川は霧立峠のあたりから西流する川ですが、古丹別の集落はむしろ南から古丹別川に合流する三毛別川に近いところにあります。合流するところにあると言ってもいいんですけどね。

コタンペッといったのは、この海にそそぐあたりに村落があったから名付けたものらしい。
更科源蔵更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.146 より引用)

河口の辺りは、今も建物が散在していますが、「集落」と言える雰囲気のものでは無いですね。一応、参考情報ということで。

チエボツナイ川

chep-ot-nay
魚・多くいる・川
(典拠あり、類型あり)

チエボツナイ川は古丹別川の北を流れる支流です。今回も更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」から。そういえば、最近はあまりロックな感じがしなくなってきましたが……。

チェポツナイ川
 古丹別川支流。チェプ・オッ・ナイで雑魚多くいる川の意。
更科源蔵更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.147 より引用)

出ました。久々にロックですね(笑)。まぁ、魚は魚でも、「鮭」や「鱒」は si-pe(本当の・食料)といって別格に扱っていましたからね。chep 程度では「雑魚」扱いなのかもしれません。

念のため、山田秀三さんのご意見も。

 チェポッナイは北支流(流長約30キロ)。古丹別市街の処で本流に入っている長い川である。chep-ot-nai(魚・多くいる・川)の意。
山田秀三北海道の地名」草風館 p.132 より引用)

さすが山田さん。chep でも「雑魚」扱いではありません(笑)。続きを見てみましょう。

西蝦夷日誌は「雑喉(ざこ)多き也」と書いた。
山田秀三「北海道の地名」草風館 p.132 より引用)

武四郎さんも容赦ないですね……。あ、「チエボツナイ川」の意味ですが、chep-ot-nay で「魚・多くいる・川」ということで。

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