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アイヌ語地名の傾向と対策 (238) 「ソウキップカオマナイ川・イケショマナイ川・横牛川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

ソウキップカオマナイ川

so-kipka-oma-nay???
滝・の上・そこにある・川
(??? = 典拠なし、類型未確認)

国道 244 号を根北峠から金山スキー場に向かって走る途中で、南から忠類川に合流する支流の名前です。ソウキップカオマナイ川は国道の橋の少し上流あたりで「左ソウキップカオマナイ川」と合流しています。明治期の地形図にも「ソーキツプカオマナイ」と記載のある、古くからの川名です。

これも「なんだろう??」と頭を抱えていたのですが、so-kipka-oma-nay で「滝・の上・そこにある・川」という解釈でいいようです。kipka という単語が知里さんの「──小辞典」などに記載がなかったのですが、これは覚えておきたいですね。

イケショマナイ川

iso-kes-oma-p???
岩・端・そこにある・もの
(??? = 典拠なし、類型未確認)

山スキー場への入口から少し東に車を走らせると「金山橋」という橋があるのですが、この「金山橋」の下を流れているのが「イケショマナイ川」です。この川を源流のほうに遡っていくと、秘湯「川北温泉」がありますね。

明治期の地形図には「ソーケシヨマナイ」と記載があります。これだと so-kes-oma-nay で「滝・端・そこにある・川」となります。ところが、現在は「イケショマナイ川」ですから、話はソー簡単にはいきません(© 知里真志保さん)。

東西蝦夷山川地理取調図を見てみると、イケショマナイ川と思しき位置に「イシヨケシヨマフ」という川が見つかりました。ふむふむ、これだと iso-kes-oma-p で「岩・端・そこにある・もの」となりますね。

まぁ、結論から言えば同じようなものなのですが、iso-kes-oma-pso-kes-oma-nay に変化して、ところが何故か isoi だけが先祖返りして「イケショマナイ」という名前になった、といったところでしょうか。これは iso が省略されたというよりは、iso あるいは soi(「アレ」)という指示代名詞に置き換えられたと考えてもいいのかもしれません。

というわけで、「イケショマナイ川」は i-kes-oma-nay で「アレ・端・そこにある・沢」と考えればいいのかもしれません。「アレ」は言挙げを憚る際に使われる言葉なので、あるいはこの岩滝が昔は祭事に使われていたことがあったのかもしれません。

横牛川(よこうし──)

yoko-us-i
狙う・いつもする・ところ
(典拠あり、類型多数)

さぁ、ようやく漢字の地名(川名か)が出てきました。実は、「横牛」という地名は道内各所にあるのですが、yoko-us-i で「狙う・いつもする・ところ」となりますね。あるいは yoko-us-nay で「狙う・いつもする・沢」かもしれません。

この「横牛」の親戚のような地名ですが、上川の愛別町に「要腰内」というところがありました。今は使われなくなった地名ですが、これもなかなか傑作な当て字ですね。

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