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春の道北・船と車と鉄道で 2016 (35) 「フゴッペ洞窟」

「国指定史跡 フゴッペ洞窟」にやってきました。「休館日 毎週月曜日・祝祭日の翌日」と書いてあってドキっとしましたが(この日は月曜日でした)、ゴールデンウィークということで開いていたようです。

イーゼルの上に「開館中」のボードが掲げられています。ちょっとした工夫ですが、洒落た感じがしますね(いいアイディアだと思います)。

こちらは壁に掛けられたものですが、「見学は有料です。」という表記は面白いですね。普通は「入館料」としそうなところですが、わざとアクセントのある表現にしたと見ました。

と言うのも、他に「記念品あり〼。」と題されたポスターが掲げられていたり……

「軽装で OK です。」というポスターまで。

確かに「国指定史跡 フゴッペ洞窟」という名前ですが、川口浩探検隊を編成するほどの秘境というわけではありませんからね(いつの時代だ)。

「フゴッペ洞窟」について

ということで、随所に遊び心が隠されていた「フゴッペ洞窟」を見学……する前に、うぃきぺを見ておきましょうか。まずは「フゴッペ洞窟」の発見譚から。

1950年(昭和25年)、札幌市から海水浴にきた当時中学生の大塚誠之助が発見、北海道札幌南高等学校で郷土研究部に属していた兄の大塚以和雄に知らせたことにより一躍有名になった(発見者が中学生であるとも、高校生であるともいわれるのはこのためである)。
Wikipedia 日本語版「フゴッペ洞窟」より引用)

あっ、「フゴッペ洞窟」そのものの「発見」は戦後になってからだったのですね。

遺跡概要
遺跡の現状は、奥行が約5メートル、問口が約4メートル、高さは約5メートルである。壁面のいたる所に原始的な図像が陰刻されている。図は200以上あり、人物や動物、船などを象徴したものと推定されるものが多く、他に列点もあり、呪術的な性貭を有するものと考えられている。アムール文化との関連性が言われているが詳細は不明である。
Wikipedia 日本語版「フゴッペ洞窟」より引用)

「フゴッペ洞窟」も「手宮洞窟」と同様に、古代の文字が刻まれているのではないか……と考えられていた時期もあったようですが、現在では(手宮洞窟と同様に)壁画だったと考えられているようです。

1972年(昭和47年)以降現在にいたるまで、刻画は、カプセル方式の施設により保護・展示され、一般に公開されている。
Wikipedia 日本語版「フゴッペ洞窟」より引用)

「遺跡」であるフゴッペ洞窟は、この建物によって保護された上で、一般公開されている……のですが、残念ながら内部は撮影禁止でした。

幻の「フゴッペ遺跡の壁画」

ところで、Wikipedia にちょっと気になる文章がありました。

「フゴッペ洞窟」ではなく「フゴッペ遺跡」と呼ばれる場合には、昭和2年に鉄道工事中に発見された古代文字様の壁画と石偶をあらわす場合があるので、混同しないよう注意が必要である。
Wikipedia 日本語版「フゴッペ洞窟」より引用)

え……。これはどうしたことでしょう。

戦前に発見されたフゴッペの遺跡は『小樽新聞』昭和2年11月14日によると、鉄道工事作業員の宮本義明によって発見された。鉄道敷設に際して、フゴッペの丸山を掘削して、2つに分けたのだが、その壁面に古代文字のような壁画と石偶のようなものが出現し、話題となった。
Wikipedia 日本語版「フゴッペ洞窟」より引用)

「鉄道敷設に際して」とありますが、そう言えば駐車場の奥に JR 函館本線の線路が通ってましたよね。この戦前に発見されていた「フゴッペ遺跡」ですが、違星北斗はこれを「ニセモノではないか」と考えていたとのこと。ただ……

北斗の「フゴッペの遺跡」と国の史跡に指定された「フゴッペ洞窟」は厳密にいえば異なるものであるが、北斗の論文には、遺跡の場所・函館本線からの距離・周囲の状況が明示されており、まさしく現在の「フゴッペ洞窟」の裏側の壁面であり、2つの遺跡にまったく関連性がないとは考えにくい。
Wikipedia 日本語版「フゴッペ洞窟」より引用)

問題の「壁画」は「フゴッペ洞窟」の裏側に位置していたとのこと。今だからこそ言えることですが、何らかの関連があったと考えられそうです。

現在、戦前のフゴッペの壁画は現存しない。違星北斗同様、金田一京助も戦前のフゴッペ壁画がニセモノであると断定し、昭和天皇に尋ねられた際にも知人のアイヌが少年時代に描いたイタズラ書きであると伝えたという。そのためか、適切な保存処置も行われず、朽ちるがままにされてしまったのである。
Wikipedia 日本語版「フゴッペ洞窟」より引用)

なんということでしょう……。あと、個人的には「壁画はニセモノだ」と伝えられた際の昭和天皇のリアクションがどんなものだったかが気になります。

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