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シャクネツナイ川
枝幸町風烈布には「フーレップ川」が流れていますが、その 1.5 km ほど北西を「シャクネツナイ川」が流れています。
「東西蝦夷山川地理取調図」には「サキヘヲツナイ」という地名が描かれています。「──ナイ」という名前からして川と考えるのが自然でしょうか。
「再航蝦夷日誌」には「シヤケベヲツナイ」という名前の「小川」が記録されていました。「竹四郎廻浦日記」では「サケヘヲツナイ」とあります。
永田地名解にも次のように記載がありました。
Shakibe ot nai シャキベ オッ ナイ 鱒居ル川「シャキポッナイ」ト云フハ急言ナリ
どうやら {sak-ipe}-ot-nay で「{鱒}・多くいる・川」と考えて良さそうですね。
明治時代の地形図には「シヤリポッナイ」と描かれているものと、「シュリポッナイ」と描かれているものがありました。「リ」が「ク」に、そして「ポ」が「ネ」に化けると「シャクネツナイ」の出来上がり……ということになりますね。
2021/5 追記
近くのバス停の名前は「先沖内」で、これは「さきおきない」と読むのだそうです。
オニオマナイ川
「シャクネツナイ川」の 0.6 km ほど北西を流れる川の名前です。「東西蝦夷山川地理取調図」には「ヲニルロヲマフ」「ヲヤヲシユマ」「ヲ子トナイ」という川が描かれていて、順序を考慮すると「ヲ子トナイ」が最も「オニオマナイ」に近いと考えられます。
「再航蝦夷日誌」
「再航蝦夷日誌」には次のように記されていました。
ヲチヽウンヘ 幷て
ヲンルロヲマフ 幷て
ヲネトナイ 小川有。上の方ニ沼有るよし也。幷て
シヤケベヲツナイ 小川有。
「竹四郎廻浦日記」
また、「竹四郎廻浦日記」には次のように記されていました。
ヲチウンヘ 小川
此所往昔十余軒有。近年迄五軒残りしが当時一軒もなし。
ヲニロヽマッフ 小川
此所も昔し五軒斗。近年迄弐軒残り、当時壱軒もなし。
ホンシロヽマッフ
ヘシトマヽナイ 此所より山道懸り、
ヲン子ヲヤウシユマ 海岸大岩石多く難所也。
ホンヲヤウシユマ 大岩有。
サケヘヲツナイ
現在の川名
現在、「乙忠部川」と「シャクネツナイ川」の間には、以下の川が確認できます。
乙忠部川
オニセップ川
ペセトコマナイ川
(名称不明の川 ①)
(名称不明の川 ②)
オニオマナイ川
シャクネツナイ川
一覧表
一覧表にすると、次のようになるでしょうか。
東西蝦夷山川地理取調図 | 竹四郎廻浦日記 | 永田地名解 | 現在名 |
---|---|---|---|
ヲチヽウベ | ヲチウンヘ | オ キト゚ ウンペッ | 乙忠部川 |
ヲニルロヲマフ | ヲニロヽマッフ | オニルロマㇷ゚ | オニセップ川 |
- | ホンシロヽマッフ | - | - |
ヘセトマイ | ヘシトマヽナイ | ペシュ エトコ オマ ナイ | ペセトコマナイ川 |
ヲヤヲシユマ | ヲン子ヲヤウシユマ | オヤオ シュマ | (名称不明の川) |
ヲ子トナイ | ホンヲヤウシユマ | オネッ ナイ | オニオマナイ川 |
サキヘヲツナイ | サケヘヲツナイ | シャキベ オッ ナイ | シャクネツナイ川 |
「ヲニルロヲマフ」か「ヲヤウシユマ」か
二通りの可能性を考えてみました。一つは「ヲニルロヲマフ」が位置を取り違えられて「オニオマナイ」に化けたというもので、もう一つは「ヲヤウシユマ」が「オニオマナイ」に化けたというものです。
前者については、「ヲニルロヲマフ」相当の位置に現在も「オニセップ川」があるため、単純に位置を取り違えたと考えるのは、やや無理があるように思えます。後者は「ヲヤウシユマ」をどう誤記すれば「オニオマナイ」に化けるのか……という問題が残ります。
地名解の検討
永田地名解には次のように記されていました。
Oya-o shuma オヤオ シュマ 海中ニ在ル石 「オョシュマ」ト云フハ急言ナリ
「ヲヤウシユマ」は o-ya-us-suma で「尻・陸・ついている・岩」あたりでしょうか。似たような岩?が複数あり、大きな方を onne-(年長の)を冠して呼ぶようになり、小さな方は pon-(小さな)を冠したと考えられます。
また、本来「ポンヲヤウシユマ」は岩の名前と考えられるので、その近くを流れる川は pon-o-ya-us-suma-nay で「小さな・尻・陸・ついている・岩・川」と呼ばれたかもしれません。
pon-o-ya-us-suma-nay の -us-suma が略されて pon-o-ya-nay となり、「ポンオヤナイ」の「ポ」が「オ」に、「ン」が「ニ」に、「ヤ」が「マ」に化けると「オニオマナイ」の出来上がり……と考えてみたのですが……。
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