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北海道のアイヌ語地名 (910) 「ポリショップ川・老根内・辺恵山」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

ポリショップ川

ho-rir-o-p??
尻(河口)・波・そこにある・もの(川)
(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)

愛別町の国道 39 号は「中愛別橋」で石狩川の南岸に渡りますが、橋の手前(北側)で道道 640 号「中愛別上川線」が分岐しています。この道道 640 号ですが、国道 39 号が開通する前は愛別町と上川町東部を結ぶメインルートでした。

「ポリショップ川」は石狩川道道 640 号「中愛別上川線」沿いに 0.5~0.6 km ほど遡ったところを流れています(北支流)。まるで警察グッズを販売してそうな川名ですが……。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「ホリヽ」という名前の川が描かれていました。また丁巳日誌「再篙石狩日誌」には次のように記されていました。

少し奥に当りて
     サ ン
此処にて則両岸ヒラなり。サンは則橋のことなり。渇水の頃は土人等此下をわたるよし。然し此頃はサンケソマナイまで来りしものも両三人ならでなし。また少し奥に当りて
     ホ リ ヽ
左りの方小川、両岸峨々として見ゆるなり。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読「丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌 上」北海道出版企画センター p.313より引用)

この「サン」は「石垣山」のことのようで、そう言われてみれば右も左も「崖」状の地形と言えそうですね。ただ崖と崖の間にそこそこ平地があるので、断崖絶壁に囲まれたという印象はそれほどありません。

そしてこの「ホリヽ」が「ポリショップ」の前身っぽいのですが、明治時代の地形図には「ホリレプ」と描かれていました。どうやら「レ」を「シ」と読み間違えてしまって、サービス精神旺盛な人がついでに「ョッ」を追加してしまった……と言ったところでしょうか。警察手帳や拳銃が売られていたらどうしようかと思ったのですが、どうやら杞憂に終わりそうですね。

上川郡の川名と言えば、知里さんの「上川郡アイヌ語地名解」というリファレンスがあるので大変助かるのですが、何故か「ポリショップ川」あるいは「ホリレプ」については記載がありません。永田地名解には記載があるのに、何故「上川郡──」に記録されなかったのでしょう……?

仕方がないので、我らが永田地名解の記述を見てみたところ……

Horerep  ホリレㇷ゚  ?

例によって例のごとく、伝家の宝刀「?」が炸裂しまくっていました。

どうやら「ポリショップ」よりも「ホリレㇷ゚」のほうが元の地名(川名)に近そうですが、これは ho-rir-o-p で「尻(河口)・波・そこにある・もの(川)」あたりでしょうか。「合流点がいつも波立っている川」と言ったところかと思うのですが……。

なお、知里さんの「動物編」によると {o-rir-o-kamuy} で「シマヘビ」を意味するとのこと(逐語解では「背面に・波・ついている・神」)。もしかしたら実際にシマヘビがいたのかもしれませんし、あるいはシマヘビのような特徴を有した川だった可能性もあるかもしれません(たとえば地層がシマヘビを思わせる模様で露出している、など)。

老根内(らうねない)

rawne-nay
深い・川
(典拠あり、類型あり)

国道 39 号の「中愛別橋」の北東、ポリショップ川と石狩川の合流点の北に標高 456.2 m の三等三角点があります。「老根内」は「らうねない」と読ませるようですが、旧仮名遣いをそのまま現代風に読むようで面白いですね。

「老根内」三角点の北西にちょっと深めの谷があり、この谷を「ローネナイ川」が流れているとのこと。こちらは「らうねない」を現代仮名遣い風に改めたようですね。

「東西蝦夷山川地理取調図」や丁巳日誌「再篙石狩日誌」には該当しそうな川は描かれていませんが、明治時代の地形図には「ラウ子ナイ」という名前の川が描かれていました。

知里さんの「上川郡アイヌ語地名解」には次のように記されていました。

 ラウネナイ(Ráune-nai 深い・沢) 細い深く掘れている沢。
知里真志保知里真志保著作集 3『上川郡アイヌ語地名解』」平凡社 p.3222 より引用)

やはり rawne-nay で「深い・川」と考えて間違い無さそうでしょうね。

アイヌ語の地名で「深い」を意味する場合、rawneooho を必要に応じて使い分けることになります。ooho は「水かさが深い」という意味で、今回の rawne は「深く掘れた」と言った意味だとされます。「ローネナイ川」は山の間の深い谷を流れているので、rawne と表現するのが適切なんでしょうね。

恵山(ぺんけやま)

penke-mem-nay
川上側の・泉池・川
(典拠あり、類型あり)

「老根内」三角点の北東に位置する、標高 715.3 m の山の名前です。頂上には同名の三等三角点がありますが、こちらは「ぺんけいやま」と読むのが公式とのこと。

山の北西には「ペンケメムナイ川」が流れていて、また南西には「ペンケメムナイ支線川」が流れています。「東西蝦夷山川地理取調図」には「ハンケナイ」という名前の川が描かれていますが、明治時代の地形図では既に「ペンケメムナイ」となっていました。麓を流れる川の名前を山名に転用したと見て良さそうでしょうか。

永田地名解には次のように記されていました。

Penke mem nai  ペンケ メㇺ ナイ  上池川
(永田方正「北海道蝦夷語地名解国書刊行会 p.47 より引用)

また「上川郡アイヌ語地名解」には次のように記されていました。

 ペンケメムナイ(Penke-mem-nai 川上の・泉池・川)
知里真志保知里真志保著作集 3『上川郡アイヌ語地名解』」平凡社 p.3222 より引用)

これもやはり penke-mem-nay で「川上側の・泉池・川」と解釈して良さそうですね。

愛別町には「パンケトウ」と「ペンケトウ」という沼がありますが、これは町の北部を流れる「狩布川」の源流部にあります。また愛別川の支流の「パンケ川」を遡ると、比布町との境(町の北西)に「班渓山」が聳えています。これらの「パンケ」「ペンケ」と区別するために mem を付け加えた……と言ったところでしょうか。

パンケメムナイ川とペンケメムナイ川は、どちらも扇状地っぽい地形を流れているので、扇端に相当するエリアでは湧き水が豊富にあるのかもしれません。

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