さてみなさん!
今朝の新聞で見かけたのですが(あ、これだとまるで浜村淳さんみたいですが、違いますからね!)、えーと、「もっとトリアージを活用して云々」という記事だったような。
「トリアージ」って何? という方のためにちょいと引用します。
トリアージ(Triage)は、人材・資源の制約の著しい災害医療において、最善の救命効果を得るために、多数の傷病者を重症度と緊急性によって分別し、治療の優先度を決定すること。語源はフランス語の「triage(選別)」から来ている。
人の手には重すぎる冷徹な選別行為
この文章で見る限りは特異性の感じられない行為に過ぎませんが、こと現実に当てはめてみると、「トリアージ」という行為は大変残酷な側面を持ちます。平たい表現をすると、多数の傷病者が出ている激甚災害に相当する状況下において、
(1) 現状でも助かるか助からないかの境界線上にいる重度傷病者に治療を施す
(2) このまま放置すれば生死に関わるが、今治療を施せば確実に救命できる傷病者に治療を施す
という二者択一を迫られた際には (2) を選ぶ、という考え方です。犠牲者を最小にとどめるためには、この考え方が最適解だとされます。しかしながら、逆に言えば、(1) のケースにおいて「重度傷病者を見捨てる」ということになります。これは医療従事者に尋常ではないストレスを与えるとされます。
例外中の例外
日本におけるトリアージ(選別)の嚆矢となったのは、2005 年の JR福知山線脱線事故だとされます。当然のことながら多くの反省点もあったようですが、それなりに成果を上げたと考えられているようです。
もっとも、トリアージは
これは「全ての患者を救う」という医療の原則から見れば例外中の例外
であり、おそらくは日本人の国民性にはなじまない考え方だと思われます。そのため、比較的近年になるまでは取り上げられることの無かった概念だと考えられるのですが、世界的に見るとその歴史はかなり長いものです。
残念ながら、英語版の記事からの引用になってしまうのですが、
History and origin
Triage originated and was first formalized in World War I by French doctors treating the battlefield wounded at the aid stations behind the front. Much is owed to the work of Dominique Jean Larrey during the Napoleonic Wars. Historically, a broad range of attempts occurred to triage patients, and differing approaches and patient tagging systems used in a variety of different countries. Triage has existed for a very long time, albeit without a particular appellation applied to the practice.
(Quoted from Wikipedia, "Triage" )
ということで、「少なくとも第一次世界大戦においてフランスの医師によって実践されていた」「類似の取り組みは過去からさまざまな国において行われていた」とされます。また、こういった経緯からも、「トリアージ」という概念は最前線の戦場にて醸成されてきた、ということが言えるかと思います。
良心的選別拒否?
おそらくはベトナム戦争の頃だったと思うのですが、アメリカの野戦病院でも戦力の早期回復を旨として、軽傷者の治療を優先していたのだそうです。この考え方が「非人道的である」として、良心的兵役拒否を申告したケースがあったのだとか。
気持ちはとっても良くわかるのですが、もはや「トリアージ」は民間レベルの概念になってきました。「小義を捨て大義に生きる」なんて言ってしまえば格好もつくのですが、いざ、「トリアージ」が必要な状況に追いやられた際に気丈に振る舞えるかと言われたら、自信は持てないですね……。
(Wikimedia Commons より借用。この作品の著作権者である Steve Mann 氏は、この作品を以下のライセンスで提供しています。:
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