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北海道のアイヌ語地名 (1290) 「オサルナイ川・チェタッキムオンネナイ線・オンネナイ川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

オサルナイ川

o-sar(-us)-nay
河口・葭原(・ついている)・川
(旧地図に記載あり、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

辺訪べぼう川の西支流で、社万部山の北を流れています。地理院地図では川として描かれているものの、川名の記入はありません。『北海道実測切図』(1895 頃) にもそれらしい川が見当たりません(川が描かれていますが、これは北隣の「オンネナイ川」かも)。

東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「ヒイシユンヒハウ」(=ピシュンベボウ川)と「キムンヒハウ」(=辺訪川)の間に「ハラコツ」「ホロハラコツ」という川が描かれていますが、「オサルナイ」らしき川名は見当たりません。

永田地名解 (1891) にもそれらしい川名・地名を見つけられなかったのですが、陸軍図には「オサルナイ」という地名が描かれていました。

北海道地名誌』(1975) には次のような記述がありました。

 オサルシナイ川 辺訪川右小川で,アイヌ語の川尻に葦原の多い川の意。
NHK 北海道本部・編『北海道地名誌』北海教育評論社 p.572 より引用)

「オサルナイ」と「オサルシナイ」で微妙に違いがありますが、辺訪川の支流ということなので同一の川を指していると考えたいです。o-sar(-us)-nay で「河口・葭原(・ついている)・川」と見て良いかと思われますl

チェタッキムオンネナイ線

chise-ta-tu???
家・に居る・峰
(??? = 旧地図で未確認、既存説に疑問あり、類型未確認)
(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

新ひだか町には「町道チェタッキムオンネナイ線」が存在するとのこと。どうやら「東豊岡」四等三角点(標高 92.0 m)の東麓を通る道路らしく、「チェタッキムオンネナイBOX橋」なる橋(ボックスカルバートかも)が存在するそうです。

このあたりは「新ひだか町三石豊岡」ですが、『角川日本地名大辞典』(1987) には次のように記されていました。

 とよおか 豊岡 <三石町>
 〔近代〕昭和11年~現在の行政字名。はじめ三石村,昭和26年からは三石町の行政字。もとは三石村大字辺訪村・幌毛村の各一部,ポンイマニチ・ベバウ・カメコタン・パハウ・ノプシツ・ノブシュツ・オン子ナイ・マキバ沢・バッタ野・バタノ・チヱタツ・ホロケナシ・シモンベハウ・ホロケ・クヲナイ・タヨーナイ・ヌプシュツ・コタナイヌカ・コーナイ・チャタツ・ポンコナイ・キムンベバウ・上ウセナイ・ポンベハウ・ヲサルナイ・シャマンベ・ホンヲンネナイ・チェッタツ・ウトランケハウ。

かつての地名が列挙されていますが、この中では「チヱタツ」「チャタツ」「チェッタツ」あたりが気になります。「チェタッキムオンネナイ」ですが、「チェタッキム」と「オンネナイ」ではなく、「チェタッ」「キム」「オンネナイ」に分割するのが正解なのかもしれません。

三石町史には「チセタチ」という旧小字があり、元々は「チセタツ」だったとのこと。chise-tat で「家・赤い樺の皮」だとするのですが、語順が妙な感じも受けます。

仮に「チセタツ」が「東豊岡」三角点のあたり(の山)を指しているとしたら……ですが、chise-ta-tu で「家・に居る・峰」と考えられないでしょうか。

一体何を言ってるんだと思われそうですが、「東豊岡」三角点のあたりの山は「オサルナイ川」と「オンネナイ川」に挟まれていて、更に引いて見ると「写万部山」に連なる山に囲まれた場所にあるように思えます。このことを指して「家の中(=写万部山などに囲まれた)にいる山」と呼んだ……と考えてみました。

オンネナイ川

onne-nay?
老いた・川
(? = 旧地図で未確認、既存説、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

辺訪川の西支流で、オサルナイ川の北隣、「東豊岡」四等三角点の北を流れています。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にはそれらしい川が見当たらず、『北海道実測切図』(1895 頃) には似た位置に川が描かれているものの、川名が描かれていません。

陸軍図にも川は描かれているものの「オンネナイ」という川名や地名は見当たりません。

ただ『角川日本地名大辞典』(1987) には次のように記されていました。

 とよおか 豊岡 <三石町>
 〔近代〕昭和11年~現在の行政字名。はじめ三石村,昭和26年からは三石町の行政字。もとは三石村大字辺訪村・幌毛村の各一部,ポンイマニチ・ベバウ・カメコタン・パハウ・ノプシツ・ノブシュツ・オン子ナイ・マキバ沢・バッタ野・バタノ・チヱタツ・ホロケナシ・シモンベハウ・ホロケ・クヲナイ・タヨーナイ・ヌプシュツ・コタナイヌカ・コーナイ・チャタツ・ポンコナイ・キムンベバウ・上ウセナイ・ポンベハウ・ヲサルナイ・シャマンベ・ホンヲンネナイ・チェッタツ・ウトランケハウ。

環境に超やさしい悪質なコピペで失礼します。少なくとも現在の新ひだか町三石豊岡に「オン子ナイ」という地名が存在していたようです。

三石町史』によると「豊岡」の旧小字名「オンネナイ」は「老大川」だとあります。onne-nay は「老いた・川」で、一般的には「大きな川」とされますが、この「オンネナイ川」はそれほど長大な川ではなさそうに思えます。

onne-nay は「老いた・川」ですが、この onne は「子や孫が多い」という含意があるという説もあります。改めて地形図を眺めてみると、確かに支流(子)やその小さな支流(孫)が多そうにも見えるので、そのことから onne と呼ばれた可能性がありそうですね。

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