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宗谷本線各駅停車 (13) 「糠南」

名寄行き 4326D は定刻通りに雄信内おのっぷないを出発しました。出発してすぐにトンネルに入ったのですが、そう言えば稚内からここまでトンネルって無かったような気も……。

ちなみにこのトンネル、「天塩線」として開通した時には存在しなかったものです。幌延町ホームページの「幌延町内の各駅ご紹介」によると、この「下平トンネル」は 1965 年に開通したもので、宗谷本線唯一のトンネルとのこと。確かに他にトンネルがあった記憶が無いんですよね……。

開通当時は存在しなかったトンネルができたということは、距離が短くなった……と思いたくなりますが、おそらく距離は殆ど変わってなさそうに思えます。トンネルができた理由は地形図を見れば一目瞭然でしょう……ということで。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

もともとは川の端っこに橋(下平陸橋)を通していたみたいですが、1961 年と 1962 年に雪崩・大雨・地すべりで落橋・流失が続くという未曾有の事態に見舞われ、トンネルに切り替えたということのようです。おおよそ想定されそうな災害がわずか 2 年の間に集中したというのも驚きですね……。

ちなみにこの「下平トンネル」のネーミングは、このあたりの旧地名「パンケビラ」にインスパイアされた可能性が高そうな感じです。

上雄信内駅(廃止)

下平トンネルを抜けると、もう天塩川の姿は見えなくなりました。このあたりはかつて「タンタシモナイ」と呼ばれていたエリアで、三方を天塩川に囲まれた南向きの平野が広がっています。

天塩川には道路橋が無く、東西に抜ける道路も無かったため、1956 年に「上雄信内仮乗降場」が設置されました。その後 1987 年の JR 北海道発足時に駅に昇格しましたが、2001 年に利用者僅少により廃止されてしまいました。この写真は駅跡を少し過ぎた場所のようですね。

5 月の天塩川はヤバい!

再び右側に天塩川が見えてきました。それにしてもこの天塩川、川の幅いっぱいに水を湛えているのが凄いというか恐ろしいと言うか……。さすがは道内第二の大河ですね。

線路は山と川の間の僅かな隙間を通ります。線路と川の間には線路管理用の歩道が設置されていますが、工事現場などで見かける仮設歩道のような構造のものですね。

……などと思っていたら、歩道が途切れてしまいました。

この写真だと 5 月の天塩川の凄さ(ヤバさ)がわかりやすいかもしれません。これだけの幅の川を水が埋め尽くしているわけですからね……。

そしてこれから通過する線路も見えています。手前は陸橋のようですが、まるで泰緬鉄道の「アルヒル桟道橋」のようですね。

いつの間にか管理用歩道?が復活していましたが、またここで途切れています。箱の中は非常電話でしょうか?

宗谷本線の線路は、問寒別川の河口のすぐ手前で内陸部に向きを変えて天塩川沿いを離れます。川の北側に平地が広がったのを見て一目散に川から離れたようにも見えて、面白いですね。

糠南駅(W67)

4326D は徐に速度を落としました。次の駅が近づいているということですが、案の定と言うべきか踏切も見えてきました。遮断機のある第一種踏切です。

そして 4326D は駅に停車しようとしていますが……うわあああ、これは!

窓はあるものの、これはどう見ても物置ですよね。この「駅舎」は「ヨドコウ」の物置を改造したものらしいので、多分 100 人乗るのは無理ですね……(そもそもサイズ的に無理がある)。

俄には信じがたい「物置駅舎」ですが、ミラーの存在がここが「駅」であることを示している……のかもしれません。

この「物置駅舎」のある「糠南駅」は、1955 年に「糠南仮乗降場」として設置され、JR 北海道の発足時に駅に昇格しています。もともとは木造の駅舎も近くにあったらしいですが、今はこの物置兼待合室が唯一の駅舎とのこと。

ホームは「南幌延駅」と同じく維持費用の安価なウッドデッキ構造で、物置もウッドデッキの上に置かれています。そのため高床式倉庫ならぬ「高床式物置」の趣がありますね……。

次は「といかんへつ」

糠南駅の駅名標は「おのっぷない」の部分に修正した跡が見えます。駅に昇格した際に設置されたものであれば、隣駅は「かみおのっぷない」となっていたのでしょうね。

また「といかんべつ」が「といかんへつ」になっていますが、2017 年に撮影された写真には誰かがマジックで濁点を加筆した跡が見えます。

2016 年 5 月時点の写真にはそのような痕跡は見当たりませんので、2016 年から 2017 年の間にかけて、誰かがこっそり手を入れた……ということなんでしょうか。

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