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アイヌ語地名の傾向と対策 (216) 「勲祢別・ウリキオナイ川・トロマイ川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

勲祢別(くんねべつ)

kunne-pet
黒い・川
(典拠あり、類型多数)

では、利別川沿いに戻りましょう。勲祢別は陸別町陸別の少し北で利別川と合流する支流の名前です。集落としては「上勲祢別」「下勲祢別」があります。

これは…… kunne-pet で「黒い・川」でしょうね。念のため山田秀三さんの「北海道の地名」で答合わせをしてみましょうか。

クンネ・ペッ(kunne-pet 黒い・川)の意。
山田秀三北海道の地名」草風館 p.304 より引用)

あ、やっぱり……(汗)。

黒ずんだやち川だったのであろう。
山田秀三「北海道の地名」草風館 p.304 より引用)

まぁ、そうなのでしょうねぇ……。

えー、折角なので(何故だ更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」からも。

利別川の支流勲弥別川の名からでたもので、アイヌ語クンネ・ペッは黒い川の意で、湿地のために川底が黒くなっているので、この名で呼ばれたもの。

さすが更科さん、今日も「で、で、で、」調が冴え渡ります。

松浦武四郎の地図にはこの川に名がないので、クンペッをクンネペッと間違ったものと思われる。
更科源蔵更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.250 より引用)

うーん。「東西蝦夷山川地理取調図」を見てみると、陸別から先の陸別川沿いの情報はかなり正確で充実しているのに比べて、利別川については陸別から先の情報量がやや少ないようにも感じられますね。陸別から先の利別川については、聞き書きがメインだったのかも知れませんね。

ウリキオナイ川

o-rik-o-nay??
河口・高い・そこにある・川
ur-rik-o-nay??
丘・高い・そこにある・川
(?? = 典拠なし、類型あり)

陸別町下勲祢別のあたりで利別川に合流する東支流の名前です。地形図で見るとわかるのですが、合流部のあたりがとても特徴的な形をしています。

音からは o-rik-o-nay (「河口・高い・そこにある・川」)か、あるいは ur-rik-o-nay (「丘・高い・そこにある・川」)であるように思えます。-o-nay はあるいは -oma-nay だったのかも知れませんね。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

トロマイ川

taor-oma-i??
川岸の高所・そこにある・ところ
(?? = 典拠なし、類型あり)

陸別町川上のあたりで利別川に合流する支流の名前です。音からは、taor-oma-i で「川岸の高所・そこにある・ところ」と読み解けそうです。留萌市の樽真布(たるまっぷ)と同じかなぁ……と考えてみたのですが、地図で見た限りでは明確な類似性を発見することはできませんでした。

永田方正の説では「樽前」も taor-oma-i だとするのですが、確かに「樽前川」は深く切り立った流れがあって、その横には台地状の「高岸」があります。

トロマイ川に戻りますが、仮に taor-oma-i ではないのだとすれば to-oro-oma-i といった解釈もできなくはありません。河口部に沼でもあればそれっぽく解釈もできるのですが、現在の地形図を見た限りでは望み薄かなぁ、と思ったりもします。

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