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アイヌ語地名の傾向と対策 (759) 「馬追・レブントン川・ウオロッチ川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

馬追(うまおい)

maw-o-i
はまなすの実・多くある・ところ

 

(典拠あり、類型あり)

長沼町と由仁町の間に「馬追山」(まおい──)という山があります。古い地図を見ると、マオイ山の西に「マオイ川」が流れていて、南に向かって流れて「マオイトー」に注いでいました。

マオイトー(馬追沼)はやがて干拓され農地へと生まれ変わりましたが、「馬追」という字が当てられたことがきっかけになったか、長沼町馬追は「──うまおい」が正式な読みになったみたいです。

山田秀三さんの「北海道の地名」には、次のように記されていました。

 マオイはマウ・オ・イ(mau-o-i はまなすの実・多い・処)の意だという。海岸から遠いこんな処に「はまなす」があるのかと思つていたが,由仁で聞くと今でも残っているとのことであった。
山田秀三北海道の地名」草風館 p.53 より引用)

ふむふむ。maw-o-i で「はまなすの実・多くある・ところ」なのですね。maw は「風」とも解釈できるのですが、ここでは「はまなすの実」と解されているようです。

更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」にも、同様の記載がありました。

 馬追(うまおい)
 馬追というと、昔北海道では牧夫や馬車追のことをいったものである。しかしこの長沼町の馬追はもと「マオイ」といったところで、現在馬追沼といわれているところがマオイトといった。マウ・オイ・トで「はまなすのある沼」という意味である。

「馬追」という表現になんか既視感があると思ったのですが、そう言えば「相馬野馬追」(そうまのまおい)が有名でしたね。

 なお長沼町と由仁町の町界にある馬追山は、昔はサマッキ・ヌプリといった山で横になっている山といい、ポロ・ヌプリ(大事な山)ともいい、大きな兎のいる山として敬拝したところ。
更科源蔵更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.70 より引用)

馬追山のある馬追丘陵は全体に平べったい感じで、確かに samatki-nupuri で「横たわっている・山」と呼ぶに相応しい感じですね。「大きな兎」については額面通りに捉えれば良いのか、あるいは何かの隠喩なのか……。

レブントン川

repun-to-ne??
沖へ行く・沼・のような

 

(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)

馬追町幌内のあたり(幌内神社から見て南側)を流れる川の名前です。地理院地図には殆どの区間が川として描かれていません。

「東西蝦夷山川地理取調図」には該当しそうな川を見つけられませんでしたが、丁巳日誌「由宇発利日誌」には次のように記されていました。

また少しの坂をこへて
    レフントン子
此小川左りの方え落マヲイ沼え入るとかや。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読「丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.198 より引用)

また、古い地形図には「レプントシュ川」と描かれている……ように見えました。興味深いことに、この地形図では河口部分が入り江のように描かれていました。

「レフントン子」であれば repun-to-ne で「沖へ行く・沼・のような」と解釈できそうでしょうか。河口部分がまるで沼のようになっていることを形容してのネーミングかと思うのですが……。

「レプントシュ川」と読むのが正しいのであれば、repun-to-us で「沖へ行く・沼・ついている」あたりでしょうか。tus で「」あるいは「」という解釈もできなくは無いのですが、どちらもちょっと説明に苦しいかな、と感じています。

ウオロッチ川

urir-ochi
鵜・多くいるところ

 

(典拠あり、類型あり)

幌内神社の北側、道道 870 号「幌内三川停車場線」沿いを流れる川の名前です。支流がいくつかあり、それぞれ「ウオロッチ第 1 枝川」「ウオロッチ第 2 枝川」「ウオロッチ第 3 枝川」と言った名前がつけられています。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「ウレロー」という名前の川が描かれていました。また丁巳日誌「由宇発利日誌」には次のように記されていました。

またしばし行て凡十丁
    ウリロチ
此川もマヲイ沼え落る也。何れも小川なり。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読「丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.198 より引用)

永田地名解には次のように記されていました。

Urer’otchi  ウレロッチ  鵜居ル處

ということで、urir-ochi で「鵜・多くいるところ」と考えて良さそうですね。

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