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北海道の旅 2008/夏 (26) 「違いはベツにナイですけど(←」

デイヴィッド・ベツカム(← 違う

そうそう。昨日書き忘れたんですが、「別海」はどう発音するか、という問題があったのでした。大昔、私がまだ幼かった頃に、パイロットファームについて書かれた本……もしかしたらマンガ……だったかも……を読んだときには、そこには「べっかい」と書かれていました。アルファベだと Bekkai ですね。

ところが、最近耳にするのは、軒並み「べつかい」、アルファベでは Betsukai なのですね。「これはまたどうしたものか」と思ったのですが……。

別海町(べつかいちょう)は、北海道根室支庁管内の野付郡にある町。 正しくは「べつかい」と読むが、一般的には「べっかい」で通る。
Wikipedia 日本語版「別海町」より引用)

そうなんですよね。ずーっと「べっかい」と思ってましたから。

町名の読みについてはかつては「べつかい」「べっかい」が混在していたが、 1971 年(昭和 46 年)の町政施行を機に「べつかい」で統一され、公的な文書や放送等ではこちらの読みが使われている。
Wikipedia 日本語版「別海町」より引用)

なるほど……。

町名の由来は、アイヌ語の「ベッ・カイェ」(川の折れ曲がっているところ)から。
Wikipedia 日本語版「別海町」より引用)

ふむふむ。pet-kay-e(ぺッカいェ)が語源だ、ということですね。「ぺ」と「い」を強く発音するみたいです。

違いはベツにナイですけど

知里真志保先生の「地名アイヌ語小辞典」をかじっただけの知識なので、ちょいと怪しいのですが、北海道の地名における「~別」は、もともとはこの pet(ぺッ)から来るものが多いようです。最初の音は濁音ではなく半濁音、ですね。つまり、「のぼりべつ」ではなくて「ぬぷるぺとぅ」の可能性が高い、ということですね。

ついでに……。北海道の地名でやたらと目にする「別」と「内」。これは petnay ですが、どっちも「川」という意味だそうです。これについても、知里真志保先生の「地名アイヌ語小辞典」に秀逸な解説がありますので……大胆に引用してみます。

nay, -e【H】/-he【K】 なィ 川;谷川;沢。──アイヌ語に川を表わす語が二つある。pet と nay と。北海道の南西部では pet を普通に川の意に用い、nay は谷間を流れてくる小さな川の意に限定している。カラフトでは nay が普通に川の意を表わし,pet は特に小さな川を表わすと云うが,地名にはめったに現われて来ない。ただし,古謡では pet を普通に使う。北海道の北東部網走や宗谷などでも地名は nay の方を普通に用い,pet は山中の小さな支流に稀につけている位のものである。北千島では全然 nay が無い。尚この二つの内 pet は本来のアイヌ語で,nay の方は外来らしい。川を古朝鮮語でナリ,或は現代語方言でナイといっているのと関係があるのかもしれない。

網走の近所に「女満別」というところがあったり、「湧別」や「紋別」もあったりするので、「北東部では nay が普通」という知里先生の知見についてはやや微妙かな、とも思いますが、それにしても……「ぺッ」と「なィ」の微妙な力関係は、ちょっと興味を惹かれます。

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