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増毛町阿分は「アフンルパㇽ」か?

「阿分トンネル」の謎

書庫は違いますが、2010/9/6 の記事、「秩父別、一已・妹背牛、花畔」の続きです。

留萌市のお隣、増毛町(「ぞうもう」に非ず)には「阿分」(あふん)という地名があります。留萌本線には「阿分駅」もあり、阿分駅と次の「信砂駅」(のぶしゃ)の間には「阿分トンネル」があります。

びみょうにピンボケに見えるのは、きっと気のせいだと思いたいです、ハイ。

まずは「アフン」の意味から

さて、「アフン」の意味についてですが、知里真志保の「地名アイヌ語小辞典」には、次のようにあります。

ahun [複 ahup] アふン 《完》入(ってい)る;入りこむ;入りこんでいる。[<aun(↓)]
知里真志保地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.4 より引用)

「アフンルパㇽ」だったら?

まぁ、これだけであれば別にどうと言うことはありませんが、この「アフン」が「アフンルパㇽ」の下略形であれば話は別です。

ahun-ru-par, -o アふンルパㇽ 【H 南】もと‘入る道の口’の義。あの世への入口*。多く海岸または河岸の洞穴であるが,波打際近くの海中にあって干潮の際に現われる岩穴であることもあり,また地上に深く掘った人工の竪穴であることもある。この種の穴は各地にあり,そこを通ってあの世から死者の幽霊が出てきたり,この世の人があの世へ行って来たりする伝説がついていて,そこへ近づくのはタブーになっている。名称はいろいろあって,所により ahun-par(入る・口),ahun-poru(入る・洞窟),ahun-ru-char(入る・道・口),ahun-ru-par(入る・道・口),oman-ru-char(行く・道・口),oman-ru-par(行く・道・口),o-pokna-ru(そこから・下方へ行く・道),poru-char(洞窟・口),wen-ru-par(悪い・道・口)などと云われる。単に pesuy(洞窟),poru(同),tusso(同)などとも云われる。
知里真志保地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.4-5 より引用)

というわけでして……。つまりは「阿分トンネル」は「あの世への入り口」に他ならない、ということになります。

増毛町阿分は「アフンルパㇽ」か?

「増毛の阿分は『アフン』であって、それを『アフンルパㇽ』と結びつけるのはこじつけじゃないのか?」というツッコミもあろうかと思いますが、「アフン」=「アフンルパㇽ」というのは割と良くある図式のようでして、例えばこんな記述もあります。

 あふん 阿分 <増毛町>
留萌(るもい)地方南部,日本海沿岸の信砂(のぶしゃ)川右岸。信砂川からアフンシラリ川までの間に,阿分村・シユンナイ・タントシナイ・カヤトマリ・シシナイ・アイトシナイの通称字があり,信砂川とカヤトマリ(萱泊)の間を元阿分と呼ぶ。地名は,地内の3洞窟をアフンルパル(あの世の入り口)と称することに由来するといい,また一説に,アイヌ語のアフニ(入り込みたる所の意)に由来するともいう(北海道蝦夷語地名解)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.94 より引用)

というわけでして……。留萌から増毛まで列車で移動される方は、「あの世」に行ってしまわないようにくれぐれもお気をつけください。

「アフンルパㇽ注意報」発令中

ちなみにこの「アフンルパㇽ」、道内各所にあるようですので、あわせてご注意ください(笑)。

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