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アイヌ語地名の傾向と対策 (199) 「バッタラウシ沢川・シュプキウシュナイ沢川・パンケポロカアンベ沢川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

バッタラウシ沢川

hattar-us-i?
淵・そこにある・ところ
(? = 典拠未確認、類型多数)

旧・穂別町の「居路夫」(現・穂別福山)から少し南で鵡川に合流している小河川の名前です。相変わらず「どマイナー」な地名(川名か)ですが、どうかお付き合いの程を。

残念ながら古い地図にはこの川の名前が見当たらないのですが、音からは hattar-us-i ではないかな? と感じさせます(もっとも、これだと「ハッタルシ」になりそうな気もしますし、最初が「バ」と濁っているのも気になりますが)。

もし hattar-us-i であれば、「淵・そこにある・ところ」となりそうです。なお、バッタラウシ沢川の源流部から稜線沿いに南に行けば、平取町の「ハッタオマナイ岳」があります。

シュプキウシュナイ沢川

supki-us-nay?
アシ・多くある・沢川
(? = 典拠未確認、類型多数)

バッタラウシ沢川と同じく鵡川の支流で、バッタラウシ沢川の南側を流れています。

明治 29 年の道庁 20 万図には「イナェㇱウキプエシ」と記されています。左から読むように書き直すと「シエプキウㇱェナイ」ですね。us を「ウㇱュ」と記したのは永田方正の有名な悪癖ですが、ここでは「ウㇱェ」になっていますね。

肝心の意味は、割と、いや、かなりそのまんまなので少々気が引けるのですが、supki-us-nay で「アシ・多くある・沢川」ではないかな、と思います。

パンケポロカアンベ沢川

panke-horka-an-pet?
川下の・後ろ向き・である・川
(? = 典拠未確認、類型多数)

シュプキウシュナイ沢川の南側を流れる鵡川の支流です。北から「ペンケポロカアンベ沢川」「パンケポロカアンベ沢川」の二つの川がありますが、どちらも独立した川で、そのまま鵡川に注いでいます。

「パンケ」「ペンケ」は、それぞれ「川下の」「川上の」という意味ですね。確かに「パンケポロカアンベ沢川」のほうが下流に近いところにあります。

「ポロカ」は、おそらく horka のことでしょう。「U ターンする」といった意味で、上流に遡っていくと本流とは逆方向に向かってしまう川のことを指します。確かに「パンケポロカアンベ沢川」は南東から北西に向かって流れているのですが、途中で北流している部分があります。このあたりの鵡川は北から南に向かって流れているので、まさに horka ですね。

「アン」は an で、「──である」という意味でしょう。「ベ」は、この場合は pet であると考えるのが自然です。ということで、「パンケポロカアンベ」は panke-horka-an-pet で「川下の・後ろ向き・である・川」となりそうです。

似たような地名として、上富良野町に「江幌」という所があります。https://www.bojan.net/2014/02/22.html もあわせてどうぞ。

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