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アイヌ語地名の傾向と対策 (765) 「ポンポロカベツ川・プトマチャンベツ川・サルシホロカ別川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

ポンポロカベツ川

pon-horka-pet?
小さな・U ターンする・川

 

(? = 典拠未確認、類型多数)

夕張市役所のすぐ北で志幌加別川に合流している西支流の名前です。夕張川の本流に合流しているわけでは無いこともあってか、あるいは単に山奥だからか、この川については現在の川名以外めぼしい情報がありません。

とは言え、意味するところはほぼ明瞭だと言えそうな気もします。「志幌加別川」は si-horka-pet でしたので、その支流が pon-horka-pet と呼ばれるのはごくごく自然な流れです。

pon-horka-pet は「小さな・U ターンする・川」と解釈して良いでしょう。あるいは知里さん風に「子(支流)である・U ターンする・川」と見ても良いかと思われます。

プトマチャンベツ川

put-oma-cha-un-pet??
口・そこに入る・細枝・ある・川

 

(?? = 典拠なし、類型あり)

夕張市役所の前から道道 38 号「夕張岩見沢線」を北東に向かうと「石炭の歴史村公園」の駐車場がありますが、「プトマチャンベツ川」は駐車場の北東側で志幌加別川に合流しています(志幌加別川の東支流)。

ズリ山?

明治時代の地形図には「フトマチヤウンベ」という名前の川が描かれています。上流部で夥しく枝分かれしているのが特徴的に見えますが、現在の地形とは随分と異なるように見えます。現在の地形図を見ると上流部に池が二つほど見えるほか、当時の地形図には存在しなかった山がいくつか増えているように見えます。

これは、もしかしたら「ズリ山」なのかもしれませんね。地域によっては「ボタ山」という表現をする場合もありますが、石炭を採掘する際に出た「捨石」によって人為的に形成された山のことです。プトマチャンベツ川の谷は奥行きはそれほどでも無い(=上流部から大水が出ることが無い)割に面的には広く、しかも下流部は両側から山が迫っているため、石を棄てるにはベストなロケーションだったのかもしれません。

閑話休題

本題に戻りますが、現在の「プトマチャンベツ川」という名前と、明治時代に記録された「フトマチヤウンベ」という名前から考えるに、put-oma-cha-un-pet で「口・そこに入る・細枝・ある・川」あたりでは無いでしょうか。

put-oma- は、両側から山が迫っていることを指してのネーミングではないかと想像します。上流には細流が多くありますが、それらが一本化されて出てくることから、それを「口」と呼んだのではないか、ということです。

cha は焚き木として使えそうな細枝のことで、それらを楽に入手できる場所は重宝された、ということだと思われます。

put と似た意味の語彙で char というものもあるので、pet-oma-char-un-pet で「川・そこにある・口・ある・川」という解釈もできなくは無い……かもしれませんが、ちょっと意味不明な感じも。

サルシホロカ別川

sir-us-horka-pet??
山・ついている・U ターンする・川

 

(?? = 典拠なし、類型あり)

「石炭の歴史村公園」の北東側で志幌加別川に合流している東支流の名前です。明治時代の地形図には「サルシュホロカペツ」と描かれている……ように見えます。

「ホロカ別」は horka-pet と見てまず間違いないでしょうか。問題は「サルシ」なのですが、素直に考えると sar-us- で「葭原・ついている・」となるんですよね……。

ただ、地形図を見た限りでは、sar(葭原)が存在できそうな余地は無さそうに思えます。となると…… sar-us- ではなく sir-us- で「山・ついている・」あたりでしょうか。sir-us-horka-pet で「山・ついている・U ターンする・川」と考えるべきなのかもしれません。

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