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アイヌ語地名の傾向と対策 (130) 「豊清水・止若内・咲来」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院電子国土Webシステムから配信されたものである)

豊清水(とよしみず)

pe-peken-nay
水・清冽・川
(典拠あり、類型あり)

美深町北端部の地名で、同名の駅もあります。さて、今度こそ純然たる和名のようにも思えますが、山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょう。

 ペペケナイ(またベベケナイとも)は音威子府村美深町の境の川。たぶんペ・ペケン・ナイ(pe-peken-nai 水が・清澄な・川)であったろう。ペケレ(peker 清い)は後の語の n に引きつけられて peken と変わる。
山田秀三北海道の地名」草風館 p.144 より引用)

むむっ、これは「十勝清水」と同じような例ですね? 「北海道駅名の起源」には次のようにあります。

 付近にある小川をはさんで、一方に「常盤村清水」、片方に「美深清水」という二つの部落があったが、この両部落を合わせて将来豊かな所となるようにという意味をこめて、「豊清水」と名づけたものである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.178 より引用)

文中に「常盤村」とあるのは現在の音威子府村のことで、ペペケナイ川(上流部では支流のクトンベツ沢川)が美深町音威子府村の境界となっています。駅があるのは美深町側ですが、音威子府側にも同名の集落があったようですね。

あ、元となったアイヌ語の地名(川名)ですが、pe-peken-nay で「水・清冽・川」ということで良さそうな感じです。

止若内(やむわっかない)

yam-wakka-nay
冷たい・水・川
(典拠あり、類型あり)

音威子府村南部の地名で、天塩川温泉駅から止若内橋を渡ったあたりの地名(天塩川西岸)です。これは間違いなくアイヌ語由来の地名でしょう。yam-wakka-nay で「冷たい・水・川」だと考えられます。

今回も「北海道の地名」を見てみましょう。

 天塩川西支流の名,地名。永田地名解は「ヤㇺ・ワㇰカ・ナイ yam-wakka-nai。冷・水・川」と書いた。冷たい飲み水の流れている川だったのであろう。
山田秀三「北海道の地名」草風館 p.143-144 より引用)

はい。間違いなさそうです。ちなみに、このあたりにある「天塩川温泉」は、泉温が摂氏 8.9 度の鉱泉で、昔は飲泉がメインだったのだとか。なるほど、yam-wakka-nay では温泉にはなりえないですからね。

咲来(さっくる)

sak-ru
夏・道
(典拠あり、類型あり)

道内の各所にある地名ですが、音威子府村咲来には同名の駅もあります。ペンケサックル川とパンケサックル川が天塩川に合流するあたりの地名ですね。

今回は「北海道駅名の起源」から。

アイヌ語の「サㇰ・ル」(夏の道)からとったもので、むかしはオホーツク海岸に漁のため往来した夏の道がここにあったからである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.178 より引用)

はい。現在でも「咲来峠」という峠道があり、そこを越えると枝幸町歌登を経由して北見枝幸に出ることができます。このあたりには変わった地名も多く、ペンケサックル川のあたりには「咲来団体」が、またパンケサックル川のあたりには「北見道路」という地名が地形図に記されています。この「北見道路」という地名は、ある意味では sak-ru を現代語訳しているようで面白いですね。

アイヌ語での解釈を忘れていました。sak-ru で「夏・道」ですね。夏の間に使われた交易路、といったところでしょうか。冬場は雪深くて使いものにならない道、だったのかも知れません。

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