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アイヌ語地名の傾向と対策 (259) 「タッカルウシ川・中茶安別・セタニウシ」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

タッカルウシ川

tat-kar-us-i?
樺の木の皮・取る・いつもする・ところ

 

(? = 典拠未確認、類型多数)

別寒辺牛川の支流の一つで、標茶駅から僅か 2 km ほどのところに水源があります。永田地名解などには記載がないようです。

この「タッカルウシ」ですが、おそらく tat-kar-us-i で「樺の木の皮・取る・いつもする・ところ」だと考えられます。永田地名解には同名の川が「胆振国 山越郡」にあるとされていますね。

あっ、そう言えば羅臼町にも「立苅臼」という地名がありました。羅臼の「立苅臼」(たつかるうし)には tap-kar-us-i では無いか、という説もあったようですが、標茶の「タッカルウシ」では果たしてどうなのでしょうね。

中茶安別(なかちゃんべつ)

cha-an-pet???
柴・ある・川
cha-un-pet???
鮭鱒の雄魚・入る・川

 

(??? = 典拠なし、類型未確認)

標茶町の地名です。地名は近くを流れる「チャンベツ川」に由来すると考えられますが、問題はこの「チャンベツ川」の情報が殆ど無いところにありまして……。

チャンベツ川は別寒辺牛川の支流で、標茶町チャンベツのあたりから厚岸町の別寒辺牛湿原に入り、道道 813 号・上風連大別線の「別寒辺牛川橋」の近くで別寒辺牛川と合流します。そろそろ「別寒辺牛」がゲシュタルト崩壊しそうな勢いになってきましたね。

地名として一番ありがちなのは ichan-un-pet で「鮭鱒の産卵穴・ある・川」なのですが、ichan-un-petichan-pet になり、そして chan-pet になるというのはあまり例がないような気もします。

「チャンベツ」という音を素直に解釈するならば、cha-an-pet で「柴・ある・川」でしょうか。cha には「鮭鱒の雄魚」という意味もあるため、cha-un-pet で「鮭鱒の雄魚・入る・川」という解釈もできなくは無いかもしれません。オスだけが遡上する川というのはちょっと考えづらいのですが、他の川と比べてオスだけが多い、といった特徴があったのかも知れません。あくまで試案に過ぎないですが……(汗)。

セタニウシ

setani-us-i?
エゾノコリンゴ・多くある・ところ

 

(? = 典拠未確認、類型多数)

チャンベツ川の支流に「下チャンベツ川」という川があるのですが、下チャンベツ川の流域が「セタニウシ」という地名で、厚岸町営の「セタニウシ牧場」という牧場があるみたいです。

永田地名解で「ベカンベ川筋」の項を眺めていると、「サルニ ウシ」や「コロコニ ウシ」、「ラルマニ ウシ」や「フㇷ゚ホ ウシ」と言った感じで、植生がそのまま川の名前になっているケースが多いようですが、この「セタニウシ」も同様だと考えられそうです。

setani-us-i は「エゾノコリンゴ・多くある・ところ」だと考えられます。そう言えば、遠軽町にも「背谷牛山」という川がありましたが、戊午日誌によれば釧路町別保のあたりにも「セタニウシ」という地名があったのだそうです。割と良くある地名……と言えそうな感じですね。

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