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アイヌ語地名の傾向と対策 (749) 「ホロト川・キムンドの滝」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

ホロト川

poro-{top-us-nay}
大きな・{竹・多くある・川}

 

(典拠あり、類型あり)

壮瞥町東湖畔、洞爺発電所の北に位置する川の名前です。地理院地図には川として描かれているものの、残念ながら川名の記載はありません。

「ホロト」という文字からは poro-to で「大きな・湖」あたりを想像してしまいますが、古い地形図を確かめてみると「ポロトーㇷウシュナイ」と描かれていることがわかりました。

果たして「トーフ」とは何だろう、to-putu(湖の・口)でも無さそうだし……と少し悩みましたが、現在「田中川」と呼ばれている川に「ポントプウシュナイ」描かれていることに気づきました。

「報志利辺津日誌」の記録

丁巳日誌「報志利辺津日誌」にも次のように記されていました。若干の疑義もあるので、少し長めに引用します。

 是より又湖中東より南岸通り西岸えの字地名を指さし問ふに、先此チホヤウシより七八丁南の方に当りて
     ホロベツ
 此湖中第一番の川也。源はヌツケヘツ岳のうしろの方の山より来る。こへて
     ホロエンルン
 大なる岬なり、廻りてまた浜つゞき也。しばしにて
     ケナシヒリカベツ
 相応の川のよし。源はケナシヒリカへツノホリと云平山有り。是より落る。並びてしばし行て
     トウフシナイ
 小川なり。崖にて少しの出岬と成るなり。
松浦武四郎・著 秋葉実・解読「丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.317 より引用)

この後「シンルシウシベツ」「ニセシリウンコツ」「チヒイカリウシ」「ソウベツフト」と続きます。「ソウベツフト」は壮瞥滝のある「壮瞥川」のことと考えて間違いと思われます。

「東西蝦夷山川地理取調図」の記録

同じ区間の川名を「東西蝦夷山川地理取調図」で確認すると、「ホロナイ」「ホンナイ」「ケナシヒリカ」「トフフンナイ」「ニセシリウシユツ」「チヒカリウシ」「クツチヤロ」となります。「ホロナイ」=「ホロベツ」=現在の「ソウベツ川」で、「クツチヤロ」=「ソウベツフト」=現在の「壮瞥川」となりますね。

現在の「ホロト川」は「トウフシナイ」(報志利辺津日誌)あるいは「トフフンナイ」(東西蝦夷山川地理取調図)のことだと考えられます。「報志利辺津日誌」では「ホロベツ」(ソウベツ川)から「トウフシナイ」(ホロト川)までの川の数が少なすぎるのですが、現在の「大林川」「烏帽子川」「岩井川」「岩屋川」「桜井川」「今村沢川」「赤川」「安宅川」「狩野川」「菅原川」がざっくり省かれた、と考えるしか無さそうな気がしてきました。おそらくインフォーマントも情報を持ち合わせていなかったのでしょう。

閑話休題

ということで、どうやら「ホロト川」の場所は大きく間違ってなさそうに思えてきました。肝心の地名解ですが、永田地名解には次のように記されていました。

Tōp ush nai  トーㇷ゚ ウㇱュ ナイ  竹川 笹ト竹ト多キ川ナリ

はい。どうやら top-us-nay で「竹・多くある・川」と考えて良さそうです。古い地形図には「ポロトーㇷウシュナイ」とあり、なぜ「トーフ」なのか謎だったのですが、永田地名解のせい……かもしれませんね。

北海道には竹が無い……と良く言われますが、そう言いながらも top 系の地名は場所を問わず散見される印象です。

キムンドの滝

kim-un-to?
山奥・そこにある・湖

 

(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)

壮瞥町北部の仲洞爺を「大川」という川が流れています。元々は「クチャウンベツ」という名前だったようですが、いつの間にか「大川」になってしまったようです。「キムンドの滝」は、大川の中流部(と言っても随分と山の中ですが)にある滝の名前です。

更科さん(ですよね)は「北海道地名誌」で次のように記していました。

 キムンドの滝 クチャンベツ川にある滝。キムンドは洞爺湖アイヌ名「キムン・ト」(山奥にある湖)から出たかと思う。
NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.533 より引用)

確かにそう解釈するしか無いですよね……。kim-un-to で「山奥・そこにある・湖」となりますが、滝はあってもそれを to(沼・湖)と呼べるかどうかは微妙なところです。

あるいは、kim-un-so で「山奥・そこにある・滝」だったものが、soto に転訛した……あたりの可能性も考えたほうが良いのかもしれません。

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