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夏の焼尻・天売・道北の旅 2015 (156)「探訪・北海道博物館(東へ西へ編)」

「北海道博物館」の総合展示室の話題を続けます。第 2 テーマ「アイヌ文化の世界」には「1. 現在を知る」「2. 伝統を学ぶ」「3. ことばを聴く」そして「4. 歩みをたどる」の 4 つのサブテーマがありますが、諸般の事情(単に順序を間違えただけだよね)で 1. → 4. → 3. と見てしまったので、最後に「2. 伝統を学ぶ」を見ることになりました。

丸木舟や弓矢、漁具などが展示されていて、ど真ん中に「伝統的な料理」「サケを使った料理」を紹介したパネルが置かれています。パネルの右奥に見える、まるで漬物石のような不思議な石は……

「クロテンなど小型の動物をとらえるための罠」でした。石はどうやら重しだったようです。

動物と言えば、「子グマを飼うための檻」も展示されていました。この檻の中で育てられた子グマが、やがてイオマンテで kamuy mosir に送られる、ということですね(熊送り)。

藤谷さん!

さて、相変わらず順番がバラバラですが、「2. 伝統を学ぶ」の 2 つ目のトピックである「着る」を見てみましょう。

ん、この女性はもしかして……

あーっ、やはり二風谷の藤谷さんだ! 萱野茂二風谷アイヌ資料館の敷地にあるチセの中でお見かけして、気さくに話しかけてくださった方なんですが、実はこの分野のレジェンドでいらっしゃるんですよね……。

こちらは「儀式のときなどに女性が身につける、はちまき」と説明があります。どこかで見たことがあるぞ、と思われた方もここ数年で急増したのではないでしょうか。

いのる

続いてのトピックが「いのる」です。「いろいろなカムイ」「ヌサとイナウ」「『あの世』に関する考え方」という 3 つのポイントに着目して説明されています。

「『あの世』に関する考え方」については、知里さん知里真志保)の著作にも詳しく記されているので、興味を持たれた方は一読されるのも良いかと思います。

住まい

4 つ目のトピックが「住まい」です。立派なチセ(家)が復元されていますが、アイヌのチセにも地域によって色々と違いがあったようです。

説明文によると、「博物館の天井の高さに合わせて、少し小さめに復元されています」とのこと。そう言われてみると、ちょっとコンパクトでしょうか……?

アイヌのチセ(家屋)と言えば茅葺きだと思っていましたが、笹葺きのものや樹皮葺きのものもあったとのこと。

上座は東か西か

そして今回一番驚いたのが、間取りの作法が東西で全く異なっていたことです。これまで聞いていた話では「アイヌは東方上位である」として、家屋の東側に上座を設けるのが習わしだ……というものでした。東側の窓はカムイのためのもので、アイヌが出入りに使うのはもってのほか……と聞いていたのですが、「帯広市伏古)における間取りの一例」を見ると、見事なまでに真逆になっています。

これを「メナシクㇽ」(東の人)と「シュムンクㇽ」(西の人)の違いと捉えることもできるかと思ったのですが、静内の家屋の間取りは二風谷と同じく東側に上座があるとのこと。静内はシャクシャインの本拠地があったところですから、メナシクㇽのエリアだと思われるんですよね。

北海道のアイヌには地域差がある……という話はよく耳にする通りで正しいと思われるのですが、たとえば naypet の使用頻度の違いのように、大きく二手に分かれた上で更に地域ごとに細分化されているような印象をどうしても持ってしまいます。果たして本当のところはどうなんでしょう……?

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