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アイヌ語地名の傾向と対策 (534) 「鹿追・ユクシナイ川・パンケビバウシ川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院地理院地図から配信されたものである)

鹿追(しかおい)

kútek-us-i
仕掛け弓を仕掛ける木・多くある・ところ
(典拠あり、類型あり)

十勝平野の北西部に位置する町の名前です。現存する十勝管内自治体の中では、唯一国鉄が通ったことの無い町……かもしれません。その代わりというのも変な話ですが、かつて私鉄の「北海道拓殖鉄道」が通っていました。

山田秀三さんの「北海道の地名」には、次のように記されていました。

鹿追 しかおい
 鹿追はクテクウシの訳名で,元来はその辺の地名。
山田秀三北海道の地名」草風館 p.318 より引用)

あっ……。然別川の支流に「クテクウシ川」があるなぁと思って、鹿追の次の題材にしようと思っていたところでした(汗)。なるほど、kútek-us-i で「仕掛け弓を仕掛ける木・多くある・ところ」なのですね。

更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」にも、もう少し詳しく記されていました。

 クテㇰウシ
 鹿追町の字名。ク・テㇰは昔鹿をとるのに立木を倒して垣をつくり、一か所だけを開けておいて、そこに仕掛弓をかけた。その鹿垣がク・テㇰで直訳すれば仕掛弓の腕という意味。

ふむふむ。「仕掛け弓」ということは、鹿が来るのを待ち構えるということですよね。ということは「鹿を追う」のではなく「鹿を待つ」ような気もしなくもないですが……まぁ、細かいことは気にしないでおくのが吉ということでしょうか。

ユクシナイ川

i-kus-na-nay?
それ・向こう側・方向・川
i-kus-un-nay?
それ・向こう側・ある・川
(? = 典拠未確認、類型多数)

然別川の南を並流する川の名前です。上流部が鹿追町を、下流部が音更町を流れていて、最終的には然別川に注いでいます。

「鹿追」なんて地名があるくらいですから、yuk-kus-nay で「鹿・通行する・川」じゃないか……と考えたくなるのですが、明治期の地形図には「エクシナナイ」と記されていました。

これは、もしかしたら斜里の「以久科」と似た地名なのかもしれません。i-kus-na-nay で「それ・向こう側・方向・川」か、あるいは i-kus-un-nay で「それ・向こう側・ある・川」あたりだったのでは無いでしょうか。

パンケビバウシ川

panke-pipa-us-i
川上の・カラス貝・多くある・ところ
(典拠あり、類型多数)

然別川の北支流で、瓜幕の道の駅あたりから、南に向かって流れています。「東西蝦夷山川地理取調図」にも「ハンケヒハウシ」と記されています。「東西蝦夷──」によると、西隣に「ヘンケヒハウシ」が流れているように記されていますが、現在の地形図を見た限りでは該当する名前の川は見当たりません。「ヨシノ川」か「南一線川」あたりがそうだったのかもしれませんね。

「パンケビバウシ川」の意味するところですが、おそらく panke-pipa-us-i で「川上の・カラス貝・多くある・ところ」なのでしょうね。えっ、それくらいわかるって? し、失礼しましたっ!

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